家の中にいても、おもしろいことは転がっていない。

風邪はすっかり治ったが、息子の日課の近所の散歩に、こんなくそ寒い中、連れ出された本日。

苦行、、いや、息子に同行させてもらったのか。

 

とりあえず、マーキングのようにいつもの道を愛車で飛ばす息子。

アンテナを屋根に設置してる業者のおじさんを見つけ、

 

「あぶないよ~~!!」と、連呼。

あんな高いところに上って、落ちないか息子なりに心配してる様子。

高いところから、おじさんは

「ありがとう!でも、気をつけて作業するからね~」と、優しく声をかけてもらった。

 

しばらくおじさんの様子を観察した後、安全を確認したのか、「いこう!」と次のマーキングスポットへ繰り出す息子。

ガタガタ震えながら付いていく、付き人のわたし。

 

今度は石が転がってるのを発見。

夢中で石を拾い出す。

「ポケットにいれるよ~」

一旦ポケットに石を詰め込み、それから入れた石を取り出して、空き地に放っていた。

何がしたいんだろう。

ガタガタ震えながら、息子の奇妙な一連の流れを観察。

 そしてまた愛車に乗って、マーキングに出かける。

 

一周終えようとした辺りで、

「こし痛いから、歩く」と、

愛車を放棄。

なんて、自由なんだ。

 

普通に散歩し始めると、真上に無数のヘリコプターの騒音が響き渡り、

「こわい!だっこ!」と、

抱っこを要求。

息子の車と、息子を抱きかかえ、不穏なヘリコプターの群れを眺める。

なんか、怖いし、重いし、寒いし、早く家に帰りたい。。

 

そうこうしてるうちに、後ろから、警備服を着たおじさんがたったったっと、追いかけてきて、わたしの腕をつかんだ。

「なにごと?!」一瞬、ヒヤッとしたが、おじさんはにっこり微笑んでこう言った。

 

「奥さん!ぼくね、どんぐりをたくさん拾ってきたんや。ぼっちゃんにあげたいんやけど、いいか?」と。

あまりに至近距離で言われたので、ノーとは言えず、

「はあ。いいんですか?」と、こくんと頷くのが精一杯だった。

 

おじさんは自分の原チャリのところへ走って帰り、ごそごそとどんぐりを取り出して、また爽快にこっちにかけてきた。

 

大きなどんぐりを息子に手渡すと、息子は「ありがとう」とにこっと笑った。

それを見たおじさんは、息子の頭を自分の孫のように撫でて、

「かわいいなあ!!」と溺愛してくれた。

「このどんぐりは、大阪の島本町というところで拾ってきたんやで。」

息子はにこにこと微笑んだ。

おじさんは、またわたしにかぶりつきで、

「奥さん、ぼっちゃんこんなかわいかったら、将来が楽しみやね!!」と、満面の笑み。

「あのね、まだ違う種類のどんぐりがあるんやけど、持ってきていいか?」

「はあ、いいんですか?」

 たったったっ。おじさん原チャリに駆けていく。

「ほら!」

今度は長細いどんぐりたち。

「これはね、伏見桃山で拾ってきたんや!」

「ほーーー。」

息子はまたにっこり「ありがとう」

 「かわいいなー!」おじさんまた溺愛。

そんなこんなを繰り返し、「じゃあ」とおじさんと別れた。

 

散歩してると、時々おもしろい人に出会う。

 

寒くても、また出かけてしまう、わたしたち親子なのだ。